第4代理事長

二宮 洋 (平成26年4月1日~平成30年6月9日)


睦育英会によせて (平成27年3月寄稿)

 この度、前任の宮本雄治理事長を引き継ぎまして睦育英会の四代目理事長に選任されました。昭和52年設立以来、この育英会ももうすぐ40年を迎えようとしております。長きに亘り、この会を盛り立てご尽力された皆様の意志を引き継ぎ、そして何よりも、創設者である二宮芳太郎氏が目指した「格調の高い、見識ある育英会」として会が前進していくために、皆様方のご指導を仰ぎ、微力ながらも全力を尽くす所存でございます。

 

 この育英会は、奨学制度、海外研修、国内研修と、ひとつの見方で言えば、この宇和島以外の土地を見る若者たちのためにわずかばかりの助力をしてきたと言うことができます。これまでの理事長も皆述べておられるように、他者を見てあらためて自分を見直すことで、若者たちはそれまでに気づかなかった新しい視点で自己の長所や短所を見いだすことができるでしょう。そして、宇和島の山海の緑をあらためて大切に思い、そこで育まれてきた自らの経験を再評価することができると思います。これは大変貴重なことです。

 

 さて、昨今、社会的、経済的に境、ボーダーのない世の中になりつつあります。

通貨にせよ、物流にせよ、それから、人の流れにせよ、この育英会ができた四十年前に比べるとまさに隔世の感があります。このような中で、他の大都市で学生時代を過ごしたり、海外に研修に行ったりすることの意義は、もしかすると、若者たちにとってあまり特別なものでなくなっているのかもしれません。しかしながら、周りを見渡してみると、ボーダーのない世の中のはずが、経済の引き起こす摩擦、民族間の衝突、それから宗教間の争いなどは、40年前とは比べ物にならないくらい深く、激しさを増しているようにも思われます。ボーダーがなくなった分、それまで歯止めの効いていたふたつの異物がぶつかり擦れ合っている、ということなのでしょうか。

 

 このような世の中で、睦育英会の行う、奨学制度、海外研修は未だに大きな価値を持っていると再認識致します。慣れ親しんだ宇和島の土地を離れて、見知らぬ土地で勉学に勤しみ、異なる文化、そして国内にせよ国外にせよ、その異文化の中で育った人々に触れ、お互いに理解し合おうとする若者たちを育てる、この意味は40年前と全く変わっておりません。むしろ、さらに重要になっているとさえ思われます。

 

 志を持って、異文化に揉まれ、それを知見として身につけ宇和島に持ち帰ってくれる若者たちをお助けできますよう、会のためにご尽力を頂いている皆様にあらためて心からよろしくお願い申し上げてご挨拶と致します。